オフィス供給過多の時代─満室状態を維持する築67年の古ビル[ウグイスビル]で行ったこと

首都圏は大規模再開発に伴う巨大新築ビルの建設ラッシュ。当然の流れとして古いビルのガラス窓には「テナント募集」の張り紙が増え続ける……。そんな都心のオフィス事情に反し、築67年を迎える[ウグイスビル]は常に満室状態を維持しています。


〝環境対応型〟への転換─[ウグイスビル]はどんな工事をしたのか

[ウグイスビル]のリノベーションを終えたのは2019年、直後「環境適応機能を備えるための追加工事」を行う準備をスタートしたのです(下記表参照)。「追加工事」とはいえ、小さくともビル一棟をまるごと〝環境対応型〟へシフトさせるには、予想をはるかに超える、多くの時間が必要でした。費用、工事内容の検証はもちろん、実際の工事期間中、テナントさんの運営や、お店の営業に支障はないのか?など、大小さまざまな懸念事項を無視してスタートさせるわけにはいかない……。ビルのオーナーさん、入居者さん、管理運営会社さんの理解を得るための説明会を行うことになりました。

2018以前築60年超。老朽化により、全室空き状態
9改修工事(リノベーション)着工
20193竣工 命名『ウグイスビル』テナント募集開始
20202満室御礼
5追加工事(グリービルディング化計画)検討
8〈❶リノベーション〉〈❷長寿命化〉〈❸サスティナビリティ・ウェルビーイング〉3項目重点的取組み計画立案
9〜ビルオーナー、各テナントへ説明会を繰り返す
20218追加工事(グリーンビルディング化)着工
10認証に必要な目標数値検証のための調査・計測を行う(継続中)
202212[WHSR(WELL Health-Safety Rating)]取得
20233[LEED v4.1 O+M]ゴールド認証取得
12第18回日本ファシリティマネジメント大賞(JFMA賞)奨励賞受賞

説明会を繰り返し、懸案事項をひとつひとつ洗い出し、理解を深めるための時間が必要でした。関係者すべての人たちの了承を得て、コロナ禍真っ只中のお盆に着工(お店がお休みだから)、念願の[WHSR(WELL Health-Safety Rating)]を取得するまでに2年の歳月を要しました。

「環境対応型のビルです」と胸を張って言い切るにはまだほど遠く、ごく小さな一歩にすぎないのかもしれません。それでも、古いビルの可能性を広げることはできたんじゃないか?私は個人的にそう考えています。

そしてこのたびの〈JFMA賞〉奨励賞受賞は「古いから無理」とあきらなかった姿勢そのものを、評価いただいたのではないか?そんなふうに思うのです(写真は授賞式の様子)。

コロナ禍を経て、テレワークやオンライン環境への設備投資、活発なコミュニティの創出など、設計・建築の世界にも〝不可欠になるであろう時代的装備〟のようなものが求められており、この流れは今後ますます加速していくに違いありません。

次にできることは何だろう?……日々考え続けます。

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